Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 841 caractères · 22 écrans
五
「でも、新八郎さん、私が死ねば、父さん母さんが、どんな目に逢わされるかわかりません、――今日も三文字とかいう人から、殿様の御執心は並大抵でないから、万一逃げ隠れでもすると、江島屋を取潰した上、両親は軽くて打首、重ければ磔刑にもなると言われました」
「それは脅かしだろう」
「いえ、脅かしでない証拠は、あの通り」
お菊が指を挙げて指す方を見ると、子分の者に率いられた足軽が五人三人ずつ、江島屋の店を遠廻しにして、蟻の這い出る隙間もなく堅めているではありませんか。
「すると、私は、この私は何うなるのだえ」
「堪忍して下さい、新八郎さん」
「お前はそのまま、人身御供になって、狒々の餌食になる気かえ」
「新八郎さん」
「殿様だろうが領主だろうが、取換え引換え若い娘を餌食にして、それで宜いという筈は無い」
「新さん」
「私は許さない、私はきっと思い知らせてやる」
その頃川原乞食とまで卑しめられた役者風情が、血の涙を流したところで、それが何んの足しになるものでしょう。
五
翌る日の早朝、江島屋のお菊は、お城から迎えに出した善美を尽した女乗物に乗って、装いを凝らして城中に迎え入れられましたが、それは、予想した通り、二度と帰らぬ旅立ちだったことは言うまでもありません。