Classiques japonais avec furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lisez 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 235 caractères · 22 écrans
六
「私の食生活はここまで行き着いてしまいました。私は二十年間の美味追求の結果、父祖の資産を失って、今日という今日破産の宣告を受けてしまったのです。御覧下さい、これが私の道楽で集めた食器や呑物ですが――」
伯爵は起って食堂の一隅の幕を引くと、その奥はマホガニー細工の彫刻付の素晴しい大戸棚で、厚ガラスの内には、豪華を極めた西洋食器のセットと、夥しい銀器が並び、その下には、幾十百本とも知れぬ最上級の洋酒がズラリと並べてありますが、その何れにも、執達吏の封印が、ベタベタと貼られてあるではありませんか。
「私はもう、この世で何んの望も無くなりました。が最後にたった一つ、ほんの一つだけ、味い残したものがあります。それを味わわないうちは、恐らく私は死んでも死に切れないことでしょう」
海蔵寺三郎伯爵は、ガラリと調子が変りました。今までの穏かな貴族的なたしなみを失って、恐ろしい情熱に燃えた眼で、一座をジッと見渡しているのです。
六
その晩、淋しい凄まじい心持で、海蔵寺伯爵の宴は果てました。五人の客はそれぞれ家路に向った中で、松尾葉子だけはたった一人、その独唱会の後援のことで、伯爵邸に残らなければならなかったのです。