Classiques japonais avec furigana
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おんなのいっしょう
女の一生
森本 薫
Lisez 女の一生 (おんなのいっしょう) de 森本 薫 (もりもとかおる) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 068 caractères · 25 écrans
栄二 今の其の歌は。
けい ふふふふ。何でしょう、今頃こんな歌を思い出すなんて、ずっと昔私が未だ子供の時分に聞きおぼえて未だに忘れないでいるたった一つの歌なんですよ。(そう言って入って行こうとする)
栄二 おけいさん。
けい え。
栄二 (それにはかまわず)するとやっぱりここがあの家だったんだ。そう言えば変り果てた中にも思いだすいろんなものがある。このくつぬぎ石は廻縁から庭へ出る時何時も踏んづけたものだった。丸坊主になった松の枝ぶりにもくずれた土蔵の面影にも見おぼえがある。ああ、この石燈籠だけは昔のままだ。するとあの辺に兄貴の部屋があって其の隣が私の部屋だったのだ。そこから廻縁を通ってここにあの部屋があった。おけいさん、貴女が初めてこの家へ入って来たあの部屋があったのだ。
けい (一、二歩栄二に近づいて殆んど息を呑むように)あなたは……栄二さん。
(早い溶暗)
第一幕の二
明治三十八年正月の夜。
(溶明)
堤家の庭に面した座敷。
外の方で「敵は幾万」と軍歌の声。時々万歳々々の叫び声がつづく。ちょっとした間があって、栄二(次男十九歳)ふみ(次女十六歳)「敵は幾万……」