Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

おんなごころしゅうい

女心拾遺

矢田 津世子

Lisez 女心拾遺 (おんなごころしゅうい) de 矢田 津世子 (やだつせこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 17 514 caractères · 36 écrans

Aozora Bunko

その肩ごしに、慶太郎はなおも物好きな眼つきで外を視ていたが、

「親父も相当なもんだ」

独り言に云ってはっはっと明るい笑声をたてた。

その慶太郎を夫人は扱いかねたように、少時、呆んやりと眺めたままである。羞恥から眼を外すか、躍起になって憤慨するか、このふたつの慶太郎しかこなかった夫人には、今の笑声が思いがけぬことだった。見せたくないものを見せてしまった。そんな気がしきりにする。自分の心の動揺よりも先きにきたのは、それを視ている慶太郎の眼だった。その眼を何処かへ押し隠したい心でうろうろした。あのような父を慶太郎は何んと視て、笑ったのだろう。これまで、良人の情事を慶太郎へだけはひた秘しに秘してきただけに、夫人は今をとりかえしのつかぬことに思い、それを見せたのが自分の所為のように愧入った。ふと、夫人は、息子の眼を防ぎ止めることに躍起になっている自分が、実は、それにかずけて良人を護っているのではなかろうか、と疑う。永い間、良人の情事を自分の落ち度にして、人の眼を怖れ憚かってきた夫人には、今では、良人を背に庇うことがひとつの仕癖になっている。良人に愛情をもっているからというよりは、そうすることが妻のつとめだと信じている。