Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
おばすて
姨捨
堀 辰雄
Lisez 姨捨 (おばすて) de 堀 辰雄 (ほりたつお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 351 caractères · 20 écrans
「もっと物語が見られるようになれば好い」――只、少女はそう思っていた。
その年の末、一しょに東にも下っていた継母が、なぜか、突然父の許を去って行った。翌年の春には又、疫病のために気立のやさしかった乳母も故人になってしまった。此頃或右馬頭の息子がおりおり姉の許に通ってくる外には、屋形はいよいよ人けのなくなるばかりだった。が、当時何よりも少女の心をいためたのは、「これを手本になさい」と云われて少女が日毎にその御手を習いながら、人知れず物語の主人公に対するようなあくがれの心を抱いていた、侍従大納言の姫君までが、その春乳母と同じ疫病に亡くなられてしまった事だった。「とりべ山谷に煙のもえ立たばはかなく見えし我と知らなむ」――少女が日頃手習をしていた姫君の美しい手跡にそんな読人しらずの歌なんぞのあったのが、いまさら思い出されて、少女には云いようもなく悲しかった。
が、そういう云いしれぬ悲しみは、却って少女の心に物語の哀れを一層沁み入らせるような事になった。少女はもっと物語が見られるようにと母を責め立てていた。それだけに、其頃田舎から上って来た一人のおばが、源氏の五十余巻を、箱入のまま、他の物語なども添えて、贈ってよこして呉れたときの少女の喜びようというものは、言葉には尽せなかった。