Classiques japonais avec furigana
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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
Lisez 婦系図 (おんなけいず) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 172 760 caractères · 343 écrans
て、かねて恩威並び行わるる師の君の、その恩に預かれそうではなく、罰利生ある親分の、その罰の方が行われそうな形勢は、言わずともの事であったから、電車でも片隅へ蹙んで、僥倖そこでも乗客が込んだ、人蔭になって、眩い大目玉の光から、顔を躱わして免れていたは可いが、さて、神楽坂で下りて、見附の橋を、今夜に限って、高い処のように、危っかしく渡ると、件の売卜者の行燈が、真黒な石垣の根に、狐火かと見えて、急に土手の松風を聞く辺から、そろそろ足許が覚束なくなって、心も暗く、吐胸を支いたのは、お蔦の儀。
ひとえに御目玉の可恐いのも、何を秘そう繻子の帯に極ったのであるから、これより門口へかかる……あえて、のろけるにしもあらずだけれども、自分の跫音は、聞覚えている。
その跫音が、他の跫音と共に、澄まして音信れれば、(お帰んなさい。)で、出て来るは定のもの。分けて、お妙の事を、やきもき気を揉んでいる処。それが為にこうして出向いた、真砂町の様子を聞き度さに、特に、似たもの夫婦の譬、信玄流の沈勇の方ではないから、随分飜然と露れ兼ねない。
いざ、露れた場合には……と主税は冷汗になって、胸が躍る。