Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
こをうばう
子を奪う
豊島 与志雄
Lisez 子を奪う (こをうばう) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 39 292 caractères · 80 écrans
湿気を含んだ冷かな微風が低地から匐い上ってきた。朽葉の匂いにほのかな甘酸い匂いが交っていた。細かなものがはらはらと落ちてくるような気配に、ふと顔を上げて見ると、欝蒼たる木立の梢に鮮かな新録が仄見えていた。都会のどよめきが遠く伝わってくる……。彼は何物にとなくぼんやり耳を傾けて、自分自身を忘れたような心地になった。寂寞の境地に人を避けて、子供のことを心の奥に想っている、こういう自分の姿が、昔……遠い昔にも、あったような気がした。それは自分ではない、父でも祖父でもない。それでもやはり自分なのである。そして、子供のことを考えるのは、遠い祖先のことを考えるのと同じだった。一種神秘な血の繋りだ!……彼は涙ぐましい心地になって、膝頭の上に頭をかかえていた。
晴れやかな笑い声に、彼は喫驚して飛び上った。四五人の女学生が彼の後ろを通っていった。彼はぼんやりつっ立っていたが、彼女等の後姿を見送ると、自分の来るべき場所ではなかったような、外国人といったような、淋しい心持ちになった。やはり家に帰ろう、そう彼は自ら云った。
彼が家に歸ったのは四時過ぎだった。玄関に並べられてる下駄で、敏子がまだ居ることを知った。