Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

こをうばう

子を奪う

豊島 与志雄

Lisez 子を奪う (こをうばう) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 39 292 caractères · 80 écrans

Aozora Bunko

そういうことがよくあった。どうかすると縁側に立って、「お母ちゃん。」と口走ることさえあった。兼子が行くとその顔をじっと見てから、「お母ちゃま、お母ちゃまね、」と云った。

「お母ちゃん」と「お母ちゃま」とは、依子にとってははっきり異った存在であることを、彼は早くも気付いた。一方は敏子のことであり、一方は兼子のことであった。

彼は依子の心を思いやって、どうしていいか分らなかった。然し彼女がそういう所まで落ち込んでいる以上は、どうにかしてやらなければいけないと思った。またこのことを、兼子へ知らしたものかどうかをも迷った。けれどもこの方は、彼から知らせるまでもなかった。彼女の方でも早くも気付いていた。彼は兼子がこう云ってるのを聞いた。

「これからはお母ちゃんとお呼びなさい、ね。その方がいいでしよう。ちゃまというのは云い悪いから、ちゃんとするのよ。ね、いいでしょう。」

依子は首肯いてみせた。けれどもこう答えた。

「いやよ、お母ちゃまよ。」

「え、なぜ?」と兼子は依子の顔を覗き込んだ。

「そんなごまかしでは駄目だ」と彼は口を※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)んだ。