Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lisez 季節のない街 (きせつのないまち) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 201 379 caractères · 394 écrans

Aozora Bunko

街へゆく電車

街へゆく電車

その「街」へゆくのに一本の市電があった。ほかにも道は幾つかあるのだが、市電は一本しか通じていないし、それはレールもなく架線もなく、また車躰さえもないし、乗務員も運転手一人しかいないから、客は乗るわけにはいかないのであった。要するにその市電は、六ちゃんという運転手と、幾らかの備品を除いて、客観的にはすべてが架空のものだったのである。

運転手の六ちゃんは「街」の住人ではない。中通りと呼ばれる、ちょっとした繁華街に、母親のおくにさんと二人でくらしていた。父親はなかった。死んだのか別れたのか、その消息は誰も知らないが、ともかく父親を見た者はなかった。おくにさんは女手でてんぷら屋をいとなみ、六ちゃんと二人で肩身せまくくらしていた。――断わっておくが「てんぷら」屋といっても、じつは精進揚げのことである。

おくにさんは四十がらみで、顔も躯も肥えていた。眼にはあらゆる事物に対する不信と疑惑のいろを湛え、口は蛤のように固くむすばれ、いくらか茶色っぽいかみの毛は、油っけなしのひっ詰め髪に結われていた。

古い伊勢縞か、木綿の布子か、夏は洗いざらした浴衣に、白い割烹前掛をつけ、夏冬とおして衿に手拭を掛けていて、黙っててんぷらを揚げたり、客の応対をしたりするのであった。