Classiques japonais avec furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lisez 季節のない街 (きせつのないまち) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 201 379 caractères · 394 écrans
そして片手でその木の枝に触り、口の中でそっと呟いた。
「そうよ、きっとこれは茱萸の木だったのよ」
茱萸の木は枯れても茱萸の木だというのではなくて、枯れてしまえばもうなんの木でもない、というような、はかなげな口ぶりであった。そうして、女は身をちぢめるようにして去っていった。
水道端にはかみさんたちが三人いて、平さんが来たのを見ると、みんな急に口をつぐんだ。平さんは黙って、鍋の中の米を洗った。水を三度とり替えながら、米と麦を手で揉むように洗い、それから水かげんをすると、黙ったままそこを去った。
「どうしたんだろう」かみさんの一人が、平さんの遠ざかるのを待って云った、「珍しいじゃないか自分で米とぎに来るなんて、あの女のひと病気にでもなったのかね」
「そうかもしれないね」と他の一人が云った、「謙ちゃんと誰かさんの話じゃ、毎晩のようにあの女の泣き声が聞えてたっていうからね」
「また謙ちゃんか、あのしとの聞きにゆくも悪いやまいさ」
「あんたも聞かれた組かえ」
「むかし語りさ、もうこのとしになっちゃあそんな精はありゃあしないよ」
平さんの小屋の外で、即席竈に火が燃えだした。