Classiques japonais avec furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lisez 家 (いえ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 141 411 caractères · 285 écrans
その静かさは、あだかも蛇が住む穴の内のような静かさであった。
お雪は起って行って、お俊夫婦の写真を取出して来た。新郎は羽織袴、新婦も裙の長い着物で、並んで撮れていた。
「お俊ちゃんの旦那さんは大層好い方だそうですネ」とお雪は豊世と一緒に写真を見ながら、「お俊ちゃんは真実に可羨しい」
「私も可羨しいと思いますわ」と豊世が言った。
「何故、そんなに可羨しいネ」と三吉は二人の顔を見比べた。
「でも仲の好いのが何よりですわ。笑って暮すのが――」とお雪は豊世の方を見て。
「今にお俊ちゃん達も笑ってばかりいられなく成るよ」
こう言って三吉が笑ったので、二人の女も一緒に成って笑った。
三吉は家の内部を見廻した。彼とお雪の間に起った激しい感動や忿怒は通過ぎた。愛欲はそれほど彼の精神を動揺させなく成った。彼はお雪の身体ばかりでなく、自分で自分の身体をも眺めて、それを彫刻のように楽むことが出来るように成った――丁度、杯の酒を余った瀝まで静かに飲尽せるような心地で。二人は最早離れることもどうすることも出来ないものと成っていた。お雪は彼の奴隷で、彼はお雪の奴隷であった。
九
「叔母さん――私も郷里へ行って参りますわ。