Classiques japonais avec furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lisez 家 (いえ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 748 caractères · 254 écrans
済んだことは済んだこと、こう妻は言い消して了おうとした。夫はそれでは済まされなかった。
寂しい心が三吉の胸の中に起って来た。その心は、女をいたわるということにかけて、自分もまた他の男に劣るものではないということを示させようとした。その日、三吉は種々と細君の機嫌を取った。機嫌を取りながら、悶えた。
間もなく勉から返事が来た。一通は三吉へ宛て、一通はお雪へ宛ててあった。お雪へ宛てては、「自分の為に君にまで迷惑を掛けて気の毒なことをした、君に咎むべきことは一つも無い、何卒自分にかわって君から詫をしてくれよ」という意味が書いてある。お雪はその手紙を読んで泣いた。
月を越えて、三吉の家では一人の珍客を迎えた。三吉は停車場まで行って、背の高い、胡麻塩の鬚の生えた、質素な服装をした老人を旅客の群の中に見つけた。この老人が名倉の父であった。
「まあ、阿父さん……」
とお雪も門に出て迎えた。
名倉の父は、二人の姉娘に養子して、今では最早余生を楽しく送る隠居である。強い烈しい気象、実際的な性質、正直な心――そういうものはこの老人の鋼鉄のような額に刻み付けてあった。一代の中に幾棟かの家を建て、大きな建築を起したという人だけあって、ありあまる精力は老いた体躯を静止さして置かなかった。