Classiques japonais avec furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lisez 家 (いえ) de 島崎 藤村 (しまざきとうそん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 748 caractères · 254 écrans
その日も、三吉の書きかけた草稿を机の上に展げて、清しい、力のある父の達雄に克く似た声で読聞かせた。
東京で送った二年――殊にその間の冬休を三吉叔父と一緒に仙台で暮したことは、正太に取って忘れられなかった。東京から押掛けて行くと、丁度叔父は旅舎の裏二階に下宿していて、相携えて人を訪ねたり、松島の方まで遊びに行ったりした。あの時も、仙台で、叔父の書いたものを見せて貰って、寂しい旅舎の洋燈の下でその草稿を読み聞かせながら、一緒に長い冬の夜を送ったことが有った。それを正太は言出さずにいられなかった。
「そうそう」と三吉も思出したように、「丁度岩沼の基督降誕祭に招ばれて行った後へ、君が訪ねて来て……あんな田舎らしい基督降誕祭に遭遇ったことは僕も始めてでしたよ……信者が五目飯なぞを煮いて御馳走してくれましたッけ。あの晩は長老の呉服屋さんの家に泊って、翌朝阿武隈川を見に行って、それから汽車で仙台へ帰てみると、君が来ていた……」
「そうでしたね……あの二階から海の音なぞも聞えましたね」と正太は若々しい眼付をして言った。
「仙台は好かったよ。葡萄畠はある、梨畠はある……読みたいと思う書籍は何程でも借りて来られる……彼処へ行って僕も夜が明けたような気がしたサ……あれまでというものは、君、死んでいたようなものだったからね」