Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
こむらたんさい
小村淡彩
宮本 百合子
Lisez 小村淡彩 (こむらたんさい) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 488 caractères · 23 écrans
「私……何も盗りはしません、ただあすこにいる権……権さんのところへ行っただけです」
「誰だい、権というのは」
「……権さんです」
駐在は、短い鉛筆で手帳を叩いた。
「――権さんだけじゃあ分らない」
「……ああ、じゃああの男が権さんていうのかい、こないだ蒲団を背負って行った出眼の男が」
ろくは、合点をした。いしは、吻っとした心持を覚えながら説明した。
「何でございます、権さんてのは、××寺の寺男のようなことをしている、矢張り、まあ一寸、気がよすぎる男のことです」
「ふーむ」
駐在は、やや興味を殺(そ)がれたように見えた。彼は、片手で顎を撫でながら、考えていたが、また訊き出した。
「もとは何処にいた?」
「町です」
「鎌倉か?」
「ええ」
「××でもしていたんだろう」
「御冗談でしょう!」
いしが高飛車に応じた。
「御覧になったって分りますわ」
「本人に訊いているんだ。――お前男と関係したのは今度始めてか」
ろくは、汚く涙で穢れた眼の隅から、駐在を偸見て体を揺った。
「町でも何かあったのか」
これは滑稽な問答であった。ろくは、真面目に、
「――ええ、あの牛乳屋さんが」
と白状した。然し、何という牛乳屋かというと、ろくは、名も住所も知ってはいなかった。