Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
しょうせつちゅうのおんな
小説中の女
豊島 与志雄
Lisez 小説中の女 (しょうせつちゅうのおんな) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 7 887 caractères · 16 écrans
と同時に、彼女からじっと見られてるのを感じた。私は一寸狼狽した気持になって、浮した腰を下しながら、てれ隠しに煙草を吸った。他の乗客はみな降りてしまって、車室には私と彼女と二人きりだった。汽車が動き出した時には、私は半ば夢の中にいるような呆けた気持だった。
彼女は真正面を向いて、もう書物もしまい、両手を膝に重ねながら、じっと身動きもしないでいた。その視線が、私のすぐ側の窓から外へつきぬけてるのを、私ははっきり感じた。そして私はまじまじと彼女の顔を見つめた。みさ子が六七歳年を重ねて、其処に坐ってるのだった。「みさ子さん」と私が云ったら、彼女は眼尻のかすかな凹みに微笑の影を浮べて、「え、なあに?」と答えながら、私の方へ親しい眼を向けそうだった。そしたら私は、「随分早く年を取りましたね、」と云ってやったであろう。
それは実に変梃な気持だった。彼女の方を――みさ子の方を――見ては悪いような、また見ないで澄してるのも本意ないような、どうしていいか分らない気持だった。彼女はやはりじっと正面の窓から、夜の都会の上を眺めていた。
東京駅に着いても、私はまだぼんやり腰を下していた。