Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

さんけいにいくるひとびと

山谿に生くる人々

葉山 嘉樹

Lisez 山谿に生くる人々 (さんけいにいくるひとびと) de 葉山 嘉樹 (はやまよしき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 33 699 caractères · 67 écrans

Aozora Bunko

一銭も通用しないもんだから、誰も彼も、そいつを投げ出しちまったんだ。ところが、誰も彼も一人残らず投げ出しちまっても、そいつはなくなりはしないんだ。この厄介な、困った代物の正体は一体何だろう。今では、そいつは、足に縛りつけた鎖みたいなものだ。そんなものをブラ下げてると、足に捲きついて引っくりかえってしまうんだ。だが、何だって俺はこんな愚劣な事を、飯場の中で考えねばならないのか。これは、借金の催促状が俺の頭ん中で、細胞の間を気でも狂ったように、駆けずり廻ったから起こった妄想ではないか。そうだ。だがだ、朝鮮で死んだ兄は、俺のような理想は一度も持ったことがなかった。だが、やっぱり死んでしまったのだ。たくさんの子供たちを残して、何も分らない。ただ、生きて行けばいいんだ。あの睦公のように。そうだ、むつっぺえでもからかってやろう――

睦子というのは、小林飯場の飯炊女であった。この女は、何よりも屋根が嫌いであった。二十七か八位の年増であった。丸い顔の、あどけない顔立ちであった。

「セーフティーバァルプ」(安全弁)という綽名がついていた。

何でも、東京で一度嫁に行ったが、姑との折合が悪くて、四つか五つになる男の子を残して、別れてきたとかいう経歴を持っていた。