Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

まぼろしのかなた

幻の彼方

豊島 与志雄

Lisez 幻の彼方 (まぼろしのかなた) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 763 caractères · 84 écrans

Aozora Bunko

」

そう云い捨てて彼は、秋子の視線から眼を避けながら、室の片隅に敷いてある布団へ、着物のままもぐり込んだ。

眼をつぶると、暗い所へ引入れられるような心地がした。眼を開くと、先刻まではそうも感じなかったが、赤ん坊のため二重に覆いをした電燈が変に薄暗かった。……幾度も眼を開いたり閉じたりしてるうちに、いつのまにか眠った。

然しよく眠れなかった。表を通る牛乳車の音に眼を覚した。次に眼を覚した時は、遠くに汽笛の音や汽車の響がしていた。それからもう眠れなくなった。そっと起き上った。顧みると、秋子も赤ん坊もぐっすり寝込んでるらしかった。

彼は一寸躊躇したが、やがて忍び足で縁側に出て、雨戸を静かに開いた。冷かな空気が薄すらと霧を湛えて、夜が白く明けていた。彼は大きく呼吸をした。それから煙草を吸った。庭の隅の茂みの中に、何やら淡い色があった。よく見ると、大きな枸杞の下垂れ枝が、薄紫の小さな花を一杯つけてるのだった。

彼はその花に暫く見惚れていた。心の奥から、第一の夜明だ! という声が湧き上ってきた。

三

粘りっ気の多い緊りの少い、何だか混沌とした全体だったが、眼だけが神秘で美しかった。