Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

まぼろしのかなた

幻の彼方

豊島 与志雄

Lisez 幻の彼方 (まぼろしのかなた) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 763 caractères · 84 écrans

Aozora Bunko

そして、奉公は初めてであること、身許も確かであること、乳は差乳で分量も多いこと、産後十ヶ月ではあるけれど、牛乳よりは子供のためにいいことなどを、ぱさぱさした而も丁寧な能弁で云い立てた。

「この児です。」と彼はぶっきら棒に、室の隅に眠ってる順一を指し示して云った。母親が産後の腹膜で悩んでるので、是非面倒をみて貰いたいと、頭から押被せるような調子で頼んだ。

婆さんは座を立って、廊下へ女を呼び出し、暫く何やら囁いていた。それから順造の前に来て、給金を二十円ほしい事と、二三日は目見のつもりでいてほしいこととを断った。

婆さんが帰った後で、女は不器用なお辞儀をして云った。

「よろしくお願い致します。」

口先から出る声で語尾が高くはっきりしていた。入江竜子という名だった。大柄な立派な体格で、眼が大きくくるりとしてることだけを、順造は見て取った。

彼は秋子の所へ行って、乳母が来たことを知らせた。彼女は初め腑に落ちないらしかった。それから、遠くを見つめるような眼付をして、漸く首肯いた。

「連れて来ようか。」

「ええ。」

竜子は室の隅に坐って、何やら考え込んでいた。それを順造は廊下の外から呼び出した。