Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

まぼろしのかなた

幻の彼方

豊島 与志雄

Lisez 幻の彼方 (まぼろしのかなた) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 41 763 caractères · 84 écrans

Aozora Bunko

あなたは後悔していらっしゃいますね!

然し口ではそう云わなかった。

「どうなさいましたの?」

彼は何とも答えないで、室の中をのっそり――と意識した歩調で歩き廻った。

「坊ちゃまが……。」

彼女が声を低めてるのが可笑しかった。眼を覚したって構うものかという気がした。わざとその枕頭を力足で歩いてやった。

順一は眼を覚して泣き出した。竜子は慌てて乳を含ました。

「むりに寝かしつけようとばかりしないで、少し抱いておやりよ。」

彼女は黙って、順一が眠るまで待った。それから彼の方へ向き直ってきた。

「私を憎んでいらっしゃるんでしょう。それなら、私出て行きます。」

「出て行けと誰が云った!」

理不尽な言葉を浴せかけてやったが、彼女は反抗して来なかった。下を向いたまま、髪の毛一筋揺がさないで、じっと坐っていた。

鎗で突いても突き通せない、じいわりとした而も深い根を張った、重々しい容積という感じだった。彼が其処を立去っても、もう見向きもしなかった。

彼は一人で苛ら立った。

夜遅く眼を覚すような時には、心が冷たく慴えきって、何となくあたりが見廻された。誰も居なかった。八畳の室ががらんとしていて、孤独な自分の姿をぽつりと浮び上らせた。