Classiques japonais avec furigana
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かいいくろひめおろし
怪異黒姫おろし
江見 水蔭
Lisez 怪異黒姫おろし (かいいくろひめおろし) de 江見 水蔭 (えみすいいん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 963 caractères · 26 écrans
高田殿はそれが腹立たしくもなった。
「はッ、御用に御座りまするか」と徒歩女中には口を利かせず、直ぐ駕籠後に立った老女笹尾が、結び草履の足下を小刻みに近寄った。
この途端、青嵐というには余りに凄かった。魔風と云おうか、悪風と去おうか、突如として黒姫おろしが吹荒んだ。それに巻上げられた砂塵に、行列の人々ことごとく押包まれた。雲か霧かとも疑わした。
笹尾は急いでお乗物の戸を締めた。陸尺四人も立ちすくんだ。手代り四人も茫然とした。持槍、薙刀、台笠、立傘、挟箱、用長持、引馬までが動揺して、混乱せずにはいられなかった。
それは併し間もなく吹き抜けて、湖水の方にと去ったのであったが、二百余人の供廻りの、眼を開き得る者は一人も無かった。
「砂が目に入ったので御座ろう」
「いや、虫の群をなしたのが、あの風に巻込まれて、運悪くも眼の中に」
「それならば未だ宜しいが、曲者有って、一時に目潰しでも投げたのでは御座るまいか、ヒリヒリ致してどうも成り申さぬ」
大名行列の大勢ことごとくが、一時盲目になって立往生をしたのであった。
七
信州柏原の本陣、古間内の表屋敷上段の間には、松平越後守光長が入り、奥座敷上段の間には、御後室高田殿が入られたのであった。