Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

おそろしきさくご

恐ろしき錯誤

江戸川 乱歩

Lisez 恐ろしき錯誤 (おそろしきさくご) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 23 075 caractères · 46 écrans

Aozora Bunko

北川氏は北川氏で、その野本氏の気まずさが反映して、彼の家の敷居をまたぐとから、もう嘔き気を催す程に不快を感じていた。

二人は生れながらの讐同志だった。

同じ学校の同じ科で、机を並べながら、北川氏はどうも野本氏が虫が好かなかった。多分野本氏の方でも、彼をゲジゲジの様に嫌っていたに違いないと、北川氏は信じていた。

二人が嘗ては恋の競争者だったことが、猶更らこの反感を高めた。北川氏はその頃から、野本氏の後姿を一目見た丈けでも、こう、からだがねじられて来る程、何とも云えぬ不快を覚えるのだった。そこへ今度の問題が起った。そして、もう破れるか、もう破れるかと見えながら、やっと危く均衡を保っていた二人の関係が、とうとう爆発して了った。

こうなっては、二人はどちらかが死んで了うまで、命がけの果し合をする外に逃げ道がないのだと、彼は信じていた。

北川氏は、機の熟する迄は、なるべく今日の訪問の真の目的を秘して置こうとしていた。

併し敏感な野本氏はとっくに夫を察したらしく、恐怖に耐えぬ目で、チラリチラリと北川氏を盗み見るのであった。

先ず運ばれた冷しビールのコップを挟んで、新しい皮蒲団の上に対座した二人の間には、最初の瞬間から、息詰る様な暗雲が低迷していた。