Classiques japonais avec furigana
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さんじのあと
惨事のあと
素木 しづ
Lisez 惨事のあと (さんじのあと) de 素木 しづ (しらきしづ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 258 caractères · 23 écrans
実際、どんな樹にでも北の方に面した皮には、苔のようなものが幹の上の方から根にかけて、一直線に生じている。それは光線に当らない為めに生じたもので、必ず北に面しているので山や林で方角を失った者が、この苔を見て方角を知ることさえあるのであった。
楯井さんは、一度目の樹の株二度目の樹の株三度目の樹の株とくわしく調べるように見てまわったが、別に目立って変ったこともない。林の上の方からは、日が上ったと見えて急に赤い光りがさして来たので、あたりがまたきら/\とはっきり動き出したようであった。楯井さんは静かに小屋に入って火をたき初めた。その日は、非常にいゝ天気であった。楯井さんは、やはり汗をながして開墾にいそがしかった。其夜は何事もなかった。
それから三日目の夕方であった。全く世の中に到底この様な事があろうとは思われない程、気味の悪い物凄い事が、この小屋を襲った。それは楯井さんの神経の働きでも妄想でもなかった。それは楯井さんにも、楯井さんのおかみさんにも、長男の十二才になる慎造にも、明らかに其の事がわかったのであったから。
夕方、一家のものが、一日の劇しい労働につかれて日が暮れると小屋に戻って来た。