Classiques japonais avec furigana
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あいとにんしきとのしゅっぱつ
愛と認識との出発
倉田 百三
Lisez 愛と認識との出発 (あいとにんしきとのしゅっぱつ) de 倉田 百三 (くらたひゃくぞう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 64 420 caractères · 129 écrans
藍色を漂わす大空にはまだ消えやらぬ薄靄のちぎれちぎれにたなびきて、晴れやかなる朝の光はあらゆるものに流るるなり。操山の腹に聳ゆる羅漢寺は半ば樹立に抱かれて、その白壁は紫に染み、南の山の端には白雲の顔を覗けるを見る。向こうの松林には日光豊かに洩れ込みて、代赭色の幹の上に斑紋を画き、白き鳥一羽その間に息えるも長閑なり。藍色の空に白き煙草の煙吹かせつつわれは小川に沿いて歩みたり。土橋を潜る水は温みて夢ばかりなる水蒸気は白く顫え、岸を蔽えるクローバーは柔らかに足裏の触覚を擽りて、いかにわれをして試みんとする春の旅の楽しきを思わしめしよ。わが友よ、御身と逢うの日は近く迫り来れり。わが心は常に哲学を思い、御身を慕えり。じつにわれらの間の友情はかの熱愛せる男女の恋にも勝りていかに纏綿として離れがたく、純乎として清きよ。夜半夢破れて枕に通う春雨の音に東都の春の濃やかなるを忍ぶとき、御身恋しの心は滲むがごとくに湧き出ずるなり。今宵月白し。花紅き籬のほとり、行人の声いと懐し。
大船で訣れるとき、訣れの言葉をも交さず、またお互いに訣れるのだということも知らないで訣れるのなら好いと思った。