Classiques japonais avec furigana
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あいとにんしきとのしゅっぱつ
愛と認識との出発
倉田 百三
Lisez 愛と認識との出発 (あいとにんしきとのしゅっぱつ) de 倉田 百三 (くらたひゃくぞう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 64 420 caractères · 129 écrans
この頃くだらぬ朋友と皮一重の談笑するのが嫌でならない。独歩や藤村等のしみじみした小説、大西博士、ショウペンハウエル、ヴントを読んでる。
今日はじつにいい天気だ。空は藍色を敷き詰め、爽やかな春風を満面に孕んだ椎の樹の梢を掠めて、白い雲がふわふわと揺らぐ。朝から熱心に心理を読んでいた私は、たまらなく暢んびりした心地になって、羽織を脱ぎ捨てて飛び出した。O市西郊の畷道、測量師の一隊が赤、白の旗を立てて距離を測ってるのが妙に長閑である。このとき僕はふと明林寺を想い出した。大西博士の眠りたまえる寺である。墓参しようと決心した。しばらく経って私は明林寺の鬱然たる境内、危そうな象形文字を印したる凸凹道を物思いがちに辿っていた。墓地に着くやいなや、癩病らしい、鎌を手にした少年が陰険な目付きでじろじろ睨んで通った。冷やりとした。数多き墓の中、かれこれと探って、ついに博士の墓を発見した。大きな松ののさばりかかった上品な墓だ。頭の上ではほろろと鳥が啼き名も知れぬ白い、小さな草花があたりに簇り咲いていた。尊き哲学者を想うこころは、私をしてその墓の前に半時間あまりも蹲らしめて深い物想いに沈ましめた。