Classiques japonais avec furigana
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あいよあい
愛よ、愛
岡本 かの子
Lisez 愛よ、愛 (あいよあい) de 岡本 かの子 (おかもとかのこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 46 138 caractères · 99 écrans
今日は彼は茶店の卓で酒を呑んでいるのだ。私は手を振って、尾いて来ちゃいけないと合図すると、彼は笑って素直に再び酒を呑み出した。私は堤を伝って川上の方へ歩いて行った。
長い堤には人がいなくて、川普請の蛇籠を作る石だの竹だのが散らばっていた。私は寒いとも思わないのに岸に繋いである筏の傍には焚火が煙りを立てていた。すべてのものは濡れ色をしていた。白い煙さえも液体に見えて立騰っていた。
川上の上は一面に銀灰色の靄で閉じられて、その中から幅の広い水の流れがやや濁って馳せ下っていた。堤の崩れに板の段を補って、そこから桃畑に下りられるようになっている。私は、ここで見渡せる堤と丘陵の間の平地一面と、丘陵の裾三分の一ほどまで植え亙してある桃林が今を盛りに咲き揃っている強烈な色彩にちょっと反感を持ちながら立ち止まった。だが、見つめていると、紅い一面の雲のような花の層に柔かい萌黄いろの桃の木の葉が人懐かしく浸潤み出ているのに気を取り倣されて、蝙蝠傘をすぼめて桃林へ入って行った。
思い切って桃花の中へ入ってしまえば、何もかも忘れた。一つの媚めいた青白くも亦とき色の神秘が、着物も皮膚も透して味覚に快い冷たさを与えた。