Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
Lisez 我が家の楽園 (わがやのらくえん) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 90 195 caractères · 175 écrans
どんなひどいところを見られても、
「麻布の家が接収されたもんで……いや、どうも」と額をおさえると、
「まったく、ひどい目におあいでした」と、みな同情してくれる。
どういう因縁でか、月々、百ドルという『アメリカの家賃』をもらいながら、物価の安い、渋谷の奥の三間きりのバラックに住み、『男、褌に、女、二布』という歌の文句のとおり、一日中、細紐一本でいて、体面をつくろうことのいらぬ庶民生活の気安さを、心いくまで執りいれていたのだった。
玄関の土間にトランクや木箱を山のように積みあげ、新聞と郵便物のほか、誰もすりぬけられないような厳重なバリケートをこしらえて、不時の闖入者にそなえ、茶の間といっている六畳に、一日中、チャブ台を出しっぱなしにしてある。食器も、茶器も、みな身近なところにあって、家常の一切が、居なりで用の足りる簡便さといったらなかった。肥りすぎて、もの憂くなっているうちの賢夫人などは、
「これにかぎるわね」
と眼を細くしてよろこんでいた。
怠けものの楽園などと、兄の五十雄君は悪口をいうが、そういうところを見ていると、無為の生活の中で、人間がだんだん物臭くなって行く経過がわかり、それはそれなりに、味のあることであった。