Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

Lisez 我が家の楽園 (わがやのらくえん) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 90 195 caractères · 175 écrans

Aozora Bunko

枕をまわして、眠ろうと努力しているうちに、眼が冴えて、眠気がさめてしまった。

鎧扉の隙間からながめると、空の低いところに仄白い夜明けの色が漂い、薄い霧が庭樹の間を川の流れのように動いているのがみえた。

五月に霧がかかることはない。靄なのか霧なのかと考えているうちに、部屋のなかがいぶりくさくなっているので、靄でも霧でもなくて、どこかの煙突から煙が吹きつけているのだと思った。

「なんの煙だろう」

煙の正体を見たいというほどの好奇心もなかったが、鎧扉を突きやって、窓ガラスに顔を寄せると、その途端、炎の色に眼を射られて、あっと叫んだ。

二階の窓から見おろす位置にある、ケチンの庇合いから猛烈な煙が吹きだし、合掌になった軒下を、炎がチラチラ走っている。

「やったな」

頭のキメの粗い賢夫人と千々子さまが、よく知りもしない電熱器をいじくったら、どんな結果になるか、わかっているはずであった。百々子は部屋を飛びだすと、逆落しに階段を飛んで、とっつきにある石田氏の部屋のドアを叩いた。

「火事よ、お父さま、火事です」

これだけの叫び声が聞えないはずはないのだが、ひねくれているのだとみえて、なかなか返事をしない。