Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あるさっかのやくび

或る作家の厄日

豊島 与志雄

Lisez 或る作家の厄日 (あるさっかのやくび) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 284 caractères · 21 écrans

Aozora Bunko

然し、今日は、いや今夜こそは、おれの方で、彼女を存分に甘えさしてやろう。身を以て、心を以て、情愛を以て、甘ったれるということがどんなことだか、彼女に思い知らしてやらなければならない。

あとは運命に任せる。生きるか死ぬか、決定的な瞬間が、現出するだろう。

おれの精神は張り切り、耳はとぎ澄されている。だが、何の気配もない。彼女はまだ来ない。あれほど堅い約束を、どうしたのであろうか。

「きっと、きっと、来ますか。」

「ええ。わたしの方から言い出したことですもの。」

「確かですね。」

彼女は頷き、柔かな手をおれに差し出し、おれの眼をじっと見つめて、微笑した。その微笑の中におれは、なにか不吉なものを感じたように、今になって思い出すのだが、ああいう場合の不吉な色は、却って、底に決意を含んでるからではなかったろうか。

彼女は来るだろう。おれは夜通し、明日までも明後日までも、待とう。

電話……近くの家にあるが、電話をかけてみることなどは下らん。煙草はまずい。酒の方がいい。電熱器の湯はすぐにさめるし、燗をするのも面倒だから、ドライ・ジンの口をあけて、ゆっくりと喉に流しこむ。