Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
あるおんなのしゅき
或る女の手記
豊島 与志雄
Lisez 或る女の手記 (あるおんなのしゅき) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 447 caractères · 37 écrans
其処はいつも非常に人通りが少なかったにも拘らず、私は彼とすれ違っても別に恐れないほどになっていた。私のうちには、それほど高慢な心が芽を出していたのである。
十月の末、私はお友達から美事な菊の花を貰って、いつもより少し遅くお寺の前を通りかかった。彼が表に立っていた。私は気にも止めなかった。私を見て少し歩き出した彼の側を、私は平気で通りぬけようとした。すると、右手に持っていた菊の花に後ろから何かが触って、花弁が少し散り落ちた。
「あ、済みません。」
そういう呟くような声が響いた。顧みると、彼は妙に慌てたような様子で、すたすたと御門の中にはいっていった。私は笑い出したくなるのをじっと我慢した。それから次に、俄に思い当ることがあって立ち止った。もしや、もしや手紙でも袂に入れられたのではないかしら……と私は思ったのである。
私は両の袂を探ってみた。何もはいっていなかった。身体中検めてみた。何処にも変った点はなかった……ではやっぱり単なる偶然だったのだろうか? そう思う外はなかったけれど、そうだとはっきり肯定することの出来ないようなものが、私の心の中に在った。