Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あるおとこのしゅき

或る男の手記

豊島 与志雄

Lisez 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 43 279 caractères · 86 écrans

Aozora Bunko

それから、後で松本から聞いた所に依ると、光子が泊った室はそれほどむさ苦しいものではなかったそうだし、また、光子は自分の過去を話すのを厭いながらも、松本の過去をしきりに聞きたがったそうである。……だが、こんな細かな詮索はぬきにして、彼女の話全体は、初めの不吉な予感に反して、淋しいようでまた伸々とした自由さを私の心に伝えた。うち晴れた秋の空を見るような感じだった。それは恐らく、何処かの狭苦しい室の中ではなく、ああいう場所で聞かされたせいかも知れない。そして不吉な予感は、ずっと先の方に対してのものだった。

光子は何かに立腹でもしたように、とっとと歩いてゆく。私はその後から、余裕のある心持でついて行きながら、わざとこんな風に尋ねかけてみた。

「あなたは一体松本君を愛してるのですか、どうなんです?」

「あんな人のこと何とも思ってやしませんわ。」と彼女は振向きもしないで答えた。

「じゃ河野さんは?」

「考えるのも厭ですわ。」

「それではどうしようって云うんです?」

「分りませんわ。」

「そりゃ誰にだって分らないでしょうけれど……でも何だか変ですね。」

此度は彼女も本当に腹を立てたらしかった。