Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
あるおとこのしゅき
或る男の手記
豊島 与志雄
Lisez 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 43 279 caractères · 86 écrans
、電車通りから一寸はいった洋食屋の二階にした――それからわざわざ自動電話を探して、河野さんの家へ――光子へ――電話をかけた。私はごく冷静に落着き払って、それだけのことをしたのである。
電話口に出て来たのは、たしかに光子らしかった。所が私が名前を云うと、向うはぴたりと口を噤んでしまった。話しかけても答えがないので、「もしもし」と呼んでみると「はい」という返辞がした。話しかけるとまた答がない。呼ぶと返辞だけする。そんなことを三度ばかり繰返した後、私は確かに光子が聴いてだけはいると信じて、是非逢いたいことがあるから来てくれと繰り返して執拗に頼んだ。所がやはり答がなかった。私は暫く待ってから再び懇願した。すると突然怒ったような声が響いた。
「それでは参りますわ、じきに。」
そして電話は切られた。私はぼんやり自動電話の箱から出て、約束の洋食屋へやって行ったが、どうしたのか、目的を達したという喜びは少しも感じなかった。否喜びどころではなく、次第に不安を感じてきた。
可なり立派な西洋料理店だったが、朝のうちのせいか、階下の広間に四五人の客がいるきりで、落着きのない静けさにがらんとしていた。