Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あるおとこのしゅき

或る男の手記

豊島 与志雄

Lisez 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 43 279 caractères · 86 écrans

Aozora Bunko

それから石のように冷たく固くなった。

「放して下さい、退いて下さい。」と彼女は夢遊病者のような声で云った。「私はあなたの側にいるのが厭です。他の室へ行って下さい。他の家へ行って下さい。暫く旅に行って下さい。それでもあなたが此処にいると仰言るなら、私が出て行きます。暫く何処かへ行ってきます。いえ、放して下さい。」

彼女は無理に身を遁れようとした。私は力の限りそれをねじ伏せて、彼女の布団の中に押入れた。

「お前が僕と一緒に暮すのを厭がるなら、そのようにしてやる。僕は考えてることがあるから、今に何もかも片をつけてやる。二三日待っててくれ。」

そして私は自分の布団にもぐり込みながら、河野さんとの決闘の計画をまた思いめぐらしてみた。

然し今考えると、私は本当に河野さんと決闘するつもりではなかったらしい。ただ息苦しさの余りそういう空想に縋りついていったものらしい。河野さんからの借金の額を俊子に尋ねもしなかったし、金を拵えようともしなかったし、拳銃を手に入れようともしなかった。そして松本に逢うと、その決心は跡形もなく消え失せてしまったのである。

私が光子に逢った日から中二日おいて、雨のしとしと降る三日日の午前、松本がふいにやってきた。