Classiques japonais avec furigana
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せっぷん
接吻
江戸川 乱歩
Lisez 接吻 (せっぷん) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 6 279 caractères · 13 écrans
四
さて、その真夜中、お花の寝息を伺って、これなら大丈夫と思ったか、宗三むっくり起上って、寝巻の前をかき合せると、ソロリソロリと寝間の外へ忍び出した。行先は云うまでもなく納戸だ。やっとたどりついて、宵に見当をつけて置いた、正面の箪笥の上の一番左の小抽斗、胸をドキドキさせながら開いて見ると、あった、あった、邪推ではなかった。十数枚の大きいのや小さいのや、写真の重ねてある一番上に、課長の村山の半身像が、いやにすましてのっかっている、でも念の為に、震える手先に力を入れてその写真を一枚一枚調べて見たが、男のものといっては村山のただ一枚で、あとはみんなお花の家庭の写真ばかりだ。もうもう疑う余地はない。そうと極った。うぬ、どうしてくれるか。くやしいのと、寒いので、宗三ガタガタと身を震わせて、はぎしりをかんだ。
四
その翌日、物も云わず、お花の差出す弁当箱をひったくると、宗三、やけに急いで役所へ出勤したが、同僚の顔を見ても、癪で仕様がない。はした月給を貰って、あの課長面にペコついているかと思うと、どいつもこいつも、かたっ端から、なぐり倒してやり度い様な気がする。挨拶もしないで席につくと、ムーッと黙り込んだまま、いやに血走った目で、まだ出勤しない課長の机を睨みつけた。