Classiques japonais avec furigana
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どうきゅうしつのしちにん
撞球室の七人
橋本 五郎
Lisez 撞球室の七人 (どうきゅうしつのしちにん) de 橋本 五郎 (はしもとごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 5 589 caractères · 12 écrans
兇器はいったい何処にかくした?」
私はハッと思い当ることがあった。そうして捜査官の鋭さに一驚した。そうだそうだ、確にこの男はあの曲馬団にいた偽の印度人に違いない。この撞球室へも今日はじめての客であった。来る早々から何か含むところがあるような態度で、私には好意は持てたが変に不審な気のする客であった。
考えて見ると、なる程あの時、若し短刀を投げたとして、一番恰好な位置にいたのはこの男である。そう云えば、チョークを拾うためとのみ見た、すうっと跼んだままで伸びて行ったこの男の右手は、問題の短刀を握っていたのではあるまいか。いやチョークを拾うにしては、そうだ、右手の高さが確に床よりはだいぶ高い空間にあった。
「知りません――」
と偽の印度人が云っていた。落付きが、黒い顔に浮んで来ていた。
「兇器なんて――どうかよくお調べになって下さい」
係官は、実にむずかしい表情をしていた。怒声が、今にも爆発するかと思うような恐ろしい顔付であった。が「いまいましい奴」と噛みしめたように男を睨んだだけで、その怒声は放たれずに済んだ。
明らかに、係官にも今一歩、つき進むことの出来ないものがあったのである。