Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ぎたい

擬体

豊島 与志雄

Lisez 擬体 (ぎたい) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 945 caractères · 25 écrans

Aozora Bunko

妻の登志子はもう眠っていたが、起き上って来た。青木は和服に着換えると、不機嫌そうに叱りつけた。

「もう起きなくても宜しい。早く眠ってしまうんだ。僕は大事な仕事があるから、それを片附けてから寝る。うるさいから、起きてはいかん。」

茶の間をはさんで、一方が寝室、一方が四畳半の仕事部屋になっていた。青木は冷えた番茶をやたらに飲んで、仕事部屋にはいって寝転んだ。或る種の蜘蛛や甲虫のことを、彼は頭裡に浮べていた。それらの虫は、大敵が身辺に迫ってくるのを感ずると、頭をすくめ足を縮めて、死んだ風を装うのである。人が指先で突っついても、そうする。そしてずいぶん長い間じっとしている。引っくり返しても、身動きもせずに死んだ真似をしている。敵が遠ざかったと感じてから漸く、這って逃げ出すのだ。

そんなものをどうして思い浮べたのか、彼自身にも分らなかった。そして一方では、胸の中で繰り返していた。「ひと一人を殺すんだ。多少の出血は止むを得ぬ。多少の出血は止むを得ぬ。」

可なりの長い間、彼はそうしていた。

それから起き上った。足音をぬすみ物音をぬすんで、道具立てをした。鋭いナイフ……安全剃刀の刄……アドルムの錠剤……オキシフル……絆創膏……繃帯……。