Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ぎたい

擬体

豊島 与志雄

Lisez 擬体 (ぎたい) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 945 caractères · 25 écrans

Aozora Bunko

「あなた、なにをなすってるの。あなた……。」

青木は黙って彼女を押しのけた。それから落着いて、手首を洗い、オキシフルをふりかけ、絆創膏をはり、繃帯を巻き、その端を登志子に結わかせた。登志子は真蒼な顔をして、口も利けないほど怯えていた。

「ばか、なぜ起きて来たんだ。」

彼女に見られたのが、青木にはひどく不満だった。

洗面器の微温湯の中には、薄く血の糸が引いていた。それをじっと見やって、青木は漸く心が和やいだ。

彼は突然言った。「お前は、僕みたいな酒喰いが、好きか嫌いか。」

登志子は静かに頭を振ってみせた。ふっくらとした頬に寝乱れた髪の毛が幾筋か垂れ、切れの長い眼がもう笑ってるように見えた。

「よろしい。今のは単にお芝居さ。然し、道具立てがなければ、本当の決心はなかなかつかない。僕は酔いどれの僕自身を殺してやったんだ。」

ところが、その喜劇のおかげで、青木は風邪をひいて、二日間寝込んだ。

風邪がなおってから、青木は石村証券へ出かけて行った。途中で鮨屋に寄って、酒を飲み、昼食をした。もっとも、酔うほどは飲まず、ただ決心を堅めるために過ぎなかった。

階段を昇ってゆき、廊下を一曲りすると、磨硝子に石村証券という金字が浮き出してる扉があった。