Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ぎたい
擬体
豊島 与志雄
Lisez 擬体 (ぎたい) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 945 caractères · 25 écrans
その前を青木は通りすぎて、次の扉の方へ行った。その扉には、石村という金字がはいっていた。青木は小首を傾げた。三日前には無かった文字である。ちょっと佇んでから、彼はノックした。女秘書の小島が扉を開いた。青木の姿を見て、おや、という表情をした。青木は構わず言った。
「石村さんはおいでですか。」
「はい、おいでになります。」
「来客ですか。」
「いいえ。」
「それでは、取次いで下さい。」
青木は中にはいって待った。やがて、小島に案内されて、社長室に通った。石村は窓際の事務机の上を何か片附けて、立ち上った。
「どうしたんだ。あちらからはいればいいじゃないか。」
「いえ、今日は、会社に来たのではなく、あなたにお目にかかりに来たのです。」
石村はじっと青木の顔を見つめた。
「扉にお名前がはいりましたね。」
「うむ、いろいろ客が多いものだからね。まあ掛け給え。」
それだけの応対が、青木にしては実は強硬な態度に出たつもりだったが、少しも手応えがなく、自分の方が滑稽にさえ思えてきた。彼はいきなり内ポケットから辞職願を取出して、石村に差出し、それから椅子に掛けた。石村は紙片を一読して、相手の顔にぴたりと吸いつくような視線を投げた。