Classiques japonais avec furigana
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ほうろうのやど
放浪の宿
里村 欣三
Lisez 放浪の宿 (ほうろうのやど) de 里村 欣三 (さとむらきんぞう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 066 caractères · 28 écrans
『何事だろうか』若者は不審に思った。生欠伸を噛みしめながら土間におりて行くと、その足元にどたりと犬の死骸が落ちた。ドアの外から支那服が投げ込んだのだ。彼は吃驚して、飛び退いた。
犬はまだ撲殺されたばかりらしく、鼻面に生血を垂らしていた。
「は、は、はッ。驚くな、御馳走するぜ!」
支那服は筋張った顔をてらてらさせて笑った。「若いの! よく寝ていたな。赤犬だ。頬べたが千切れるほど旨いぞ!」
「よう、出来た。誰れが料理んだ。支那服、貴様の腕前を見せろよ!」
逞くましい体格の黒眼鏡が、濡板と、研ぎすました短刀をひっ提げて這入って来た。そして抛り出した濡板の上に、短刀を突っ立てた。
「馬鹿! 貴様だよ」支那服が罵り返えした。だが、親しい間柄だと見えて、
「怖気づいたか」
「馬鹿ぬかせ!」
と、二つ三つ言い争った揚句、支那服が濡板の上に犬をひきずり上げた。ふと、黒眼鏡が、若者に気づいて、
「よう、起きたな。何処から流れた」と、親しみ深い笑いを見せた。
「え、奉天から。どうかお願いいたします」彼は柔順に頭を下げた。
「ほ、腹が減ったろう。今に腹一杯喰わすぞ!」
「え、どうぞ」
「出来上がるまで、上って休んでいなよ」