Classiques japonais avec furigana
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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Lisez 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 076 caractères · 256 écrans
あの細君が来てから、不義理はみんなかえしたのです」
羽左衛門が年少で、技芸も未熟であり、給料も薄く、そして家には先代以来の借財が多かった時分に、身の皮まで剥いて尽したのが洗い髪のおつまである。ままにならぬ世を果敢なんだ末に、十八の若旦那市村は、身まで投げたほどだった。おつまはその心にほだされて、ありとある事を仕尽したが、結局はお鯉が嫁入りするようになった。もうそのころ羽左衛門は昔日の若造でもなければ、負債があるとはいえ、ひっぱり凧の青年俳優であった。またその次の細君の時代は、羽左衛門の一生に、一番覇を伸しかけた上り口からで、好運な彼女は、前の人たちの苦心の結果を一攫してしまったのであった。
「お鯉さんときたら、あんまり慾がなくって、だらしないくらいでしたからね、あれじゃとても羽左衛門は立ちませんでしたあね。なんしろ手当り次第にやっちまうのでしたからね。誰れか下の者が訪ねてゆくでしょう「お前に何かやりたいねえ」というと、何処からか到来物らしい、新しいラッコの帽子を、そらきた、とやるのですからね。一事が万事で大変でさあね」
猫背な三味線の師匠は、小春日和の日を背中にうけた、ほっこりした気分で、耳の穴を、観世縒でいじりながら、猫のようにブルブルと軽く身顫いをした。