Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lisez 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 138 172 caractères · 277 écrans
」
鼓村師は、庭へ出れば、安房上総の山脈が、紫青く見えるのを知っているので、ふと、そんなことを言っている。
曲からうけた感銘に、ほろほろとしている主客を、救ってくれたのは、鼓村師の好きな素麺だった。古くからいる、年とった女中は、弾奏のあとで、冷たいものを悦ばれるのを知っているので、大きな鉢へ蕗の葉を敷いて、透き通るように洗った素麺を盛ったのを、そのまま鼓村師の膝の前へ押しつけた。
「これを、みな食べたら、恥かしいがな。」
そう言いながら、一鉢はすぐになくなってしまった。それと同時に、
「あなた様の分は、もう一鉢ございます。」
と、代りの、前のよりも大きい鉢が運ばれて来た。
大きな人が、舞妓でもするようにはにかんで、口をつまんで、スッ、ヘ、スッ、ヘ、と中へ笑いながら、その鉢も引きよせたが、素麺を、するりと咽喉にすべり入れると、先刻の、正午のお弁当の話がまたつづけられることになって、
「その女子が断わっていうのには、先生には、誠に済まないのだが、どんなおりにも、正午の時計と、キチンとおなじに食べつけているので、そうしないと、お腹の具合が悪いというて――何処か悪いところがあるのじゃろうが――」