Classiques japonais avec furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lisez 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 138 172 caractères · 277 écrans
「ほんのこというと、まだよう、まとまっていなかったのじゃ。」
鼓村さんは、自分だけでなら、どんなふうにも弾けるので、癖になってしまってて、困ると自分でこぼして、気持ちが軽々したように、
「浜子さん、有難う有難う、助かったわい。」
と機嫌よく言った。
その時、わたしは、浜子は、ひっこみ思案なのだが、大きなものの作曲も出来ると信じた。
千束町の喜熨斗氏の舞台へ、私と、浜子と鼓村さんと翠扇さんとが集った時、猿之助役の大臣の夢の賤夫と、翠扇役の夢に王妃となる奴婢とが、水辺に出逢うところの打合せをした。猿之助の父は段四郎で踊りで名の知れた人、母のこと女は花柳初代の名取で、厳しくしこまれた踊りの上手。この二人が息子のために舞台前に頑張っている。鼓村さんは息子が踊りで叱られるのまでハラハラして、その方へ気をつかうので、琴柱をはねとばしたりした。
「おや、おや、どうも。この方が乱れて――」
と、温厚な段四郎は、微笑しながら飛んだ琴柱を拾いに立った。可愛らしい鼓村は、大きな、入道のような体で恐縮し、間違えると子供が石盤の字を消すように、箏の絃の上を掌で拭き消すようにする。