Classiques japonais avec furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lisez 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 138 172 caractères · 277 écrans
しかも、浜子の父平兵衛が、長い間支配人として、どんなに店を富ませたか知れないので、莫大もない慰労金が分けられることになったまま、父親が死に、主家の主人が二代つづいて死んだので、そのままになっていたのも、取らずじまいになってしまった。
「金持ちなんて、それは間違いだけれど、品物だけはどうにかこうにか、あるにはある。」
と、浜子はいっていたが、名物ものや、美術品などはさほどでないとしても、横浜開港時に手に入れた舶来品が、忘れてしまうほどあったのだ。切子の壺ばかりも、好いのが沢山あった。古い洋酒が、土蔵の縁の下にコロコロしていて、長持の中は、合紙がわりに、信州から来る真綿がまるめて、ギッシリ押込んであり、おなじような柄の大島がすりが、巻いたままで、幾本もはいっていて忘れたというふうであった。
「おやっちゃんに見せたことあるかしら、光琳の蒔絵の重箱を。」
と、いうと、賢吾氏が、二十五歳にもなるが、そんなのは私も見たことがないというようであった。
炭は、土蔵の縁の下にも住居の下にも、湿けないようにと堅炭が一ぱい入れてあるといった家で、浜子一代は、どんなことがあっても家に手を入れないですむようにと、壁の中にも鉄棒のしんの入れてある念入りの普請を、父親は残しておいた。