Classiques japonais avec furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lisez 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 138 172 caractères · 277 écrans
四
近いうちに、どうしても東京へも一度行くという音信が、孝子のところへ、錦子から届いた。
郷里の実家に、落附こうとすればするほどあたしはジリジリしてくる。どうして好いのか、笑って見たり、怒って見たり、疳癪をおこしてばかりいる。
あたしは、こんな事をしていて好いのかと、自分の胸を掻きっている。郷里へ帰ったからって、好いものは書けやしない。やッぱりあたしは、美妙のそばにいなければいけないのだ。
あなたは、美妙の評判がよくないと仰しゃるが、それは、あの人を女が好くので妬まれるのです。それにこのごろ、紅葉の方が小説を多く書いて、美妙が休みがちなので、そんな噂をするのでしょう。
実は、美妙からも出て来ないかといって下さるから、あたしはどうしても出京します。
――そんなふうな手紙が幾度か繰返されてくるうちに、ある日、錦子は、孝子の前へ笑って立った。
「いけない娘になってしまって――自分でも、我儘だと思うけれど、なんだかジリジリして。」
と、謝るように孝子を見る眼に、矯羞をうかべた。
「あなたを、大層思っていた人が郷里に、あったというではないの。」
「あんなの、なんでもないのよ。