Classiques japonais avec furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lisez 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 138 172 caractères · 277 écrans
」
とも錦子はいったりした。こんど来て見ると、美妙斎が、改進新聞社の勤めもやめてしまい、金港堂の『都の花』も廃刊になり、家の中が苦しそうだともいった。
改良半紙へ罫を引いた下敷を入れて、いなぶねと署名したまま題も置かず、一行も書けない白紙へむかって、錦子は呻吟っている日がつづいた。
墨を摺って、細筆を幾たび濡らしても、筆さきも硯の岡も、乾いて、墨がピカピカ光ってしまうだけだった。
錦子は、そんな、ムシャクシャしたあとで、そんなにまで書けない自分を嘆きに、美妙斎の書斎を訪ずれると、今夜も留守、今夜も留守という日がつづいた。
錦子は、肩懸けでも編んで、気持ちをまぎらそうとしたが、毛糸を編む手許になんぞ心は集中されなんかしなかった。ウーとうなると、グイと糸をひっぱって、編棒で突きさしたりして、丸い毛糸の玉を、むしゃくしゃに捻りあげてしまった。
「おそろしくヒステリーになってるね。」
と、そんなあとで逢うと、美妙はハグラかすように言う。
「随分お留守ですのね。」
「ええね。」
美妙はしゃあしゃあと答えて、
「別荘行きも、もうお止めさ。」
と、うふ、うふと胸のなかで、自分だけで笑って、別荘なんぞ、何処にあるのかと聞くと、