Classiques japonais avec furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Lisez 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 138 172 caractères · 277 écrans
その後、幾度か、あたしはおしかさんの秘話を聞いて、一人の女性の運命と、生きていた時代との記録を残しておきたいと思いながら、その機会を失って、今では、当のおしかさんも、おやすさんも死んでしまったので残念におもっている。
丁汝昌の死は、モルガンが最初に来た年より、ほんのすこし前のことなので、おしかさんがモルガンの懇望も相手にしなかったのは当然のことだが、モルガンにすれば、おしかさんの京なまりが懐しかったのであろう。京都へいって、そこでも三代鶴やその他の一流の舞妓に目をつけた。
外国人の客を専門の縄手の小野亭は、お雪の世話をよくしていた。おとなしいお雪が、胡弓を弾くのを、モルガンは凝と聴いている時があった。傷ついた心をともにむせび泣いてくれるような、胡弓の絃の音がお雪の心情のようにさえ思われて来たが、
「この胡弓をもらって行く。」
と言出したのは、二度目に日本へ来た時だった。
「お雪さんも連れて行きたい。」
といったが、その時、お雪には末を約束した学生があったが、そうとは言わず、今度逢うまでに考えておくというように、また来ようとは思いもかけなかったので、軽くいっておいた。