Classiques japonais avec furigana
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ほうそくについて
方則について
寺田 寅彦
Lisez 方則について (ほうそくについて) de 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 8 493 caractères · 17 écrans
もし物質間の引力が距離によらず同一であったり、あるいは距離の大なるほど大であったと仮定したら、天地万物の運動はすべて人間には端倪する事の出来ぬ渾沌たるものになるであろう。如何なる強度の望遠鏡でも窺う事の出来ぬような遠い天体の上に起る些細な出来事も直ちに地球上の物体に有限な影響を及ぼすとなれば、人間の見た自然の運動にはおそらくなんらの方則を見出すことも出来ないだろう。否方則といえばただ偶然の方則が支配するばかりであって要するに科学は成立しそうもないのである。
上に述べたペンに働く力はこれに止まらぬ。ペンに微量の荷電があれば、あるいは自身にはなくても他に荷電体があれば、その感応によって周囲の物との間に引斥力が起る。また地球磁場等の影響はこれに偶力を及ぼす事になる。その磁場は諸天体にも感応し反対に諸天体の磁場もまたこれに影響する。仮りに周囲や天体の荷電や付磁がことごとく恒同で既知であっても事柄は複雑であるのに、いわんやこれら相互の位置状態の変化から生ずる相互の影響を考えなければならぬとなればいよいよ面倒な事になってしまう。もしもこれらの影響が収斂級数を作らなかったなら果してどうであろうか。