Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans

Aozora Bunko

闇の中でボートが擦れ違う度びに、脂粉の匂いがしばらく尾を曳いて水面を流れて来た。岸べの森の一角に見えるカフェー・パビヨンロワイヤルの天蓋の上には、一面の紅霧が棚曳き渡り、湖は森の地平から盛り上った張力を見せ灯火に光っている。

「あッ、危いわ。」

と千鶴子が声を上げた。その途端、島から垂れ下った樹の枝が久慈の頭を撫でたので、そこだけ真白な花が際立ち騒いで揺れた。島の芝生の水に浸っている岸から、数羽の白鳥が水面へずぼりと端正な姿で降りて来ると、提灯の紅の円光の中をほのかな光りに染りつつ遊泳した。樹の下に停っているボートの中では、ときどき男女の一対が一つの影となって動かなかった。

「島へ上りましょうよ。もう暫くここへも来れないんだから。」

とアンリエットは囁くように久慈に云った。ボートを島の渡場につけ一同は岸へ移って茶を飲みにカフェーの方へ歩いた。

董とチューリップの放射状に開いている花壇を通り、明るいカフェーの庭に這入り、五人は向き合って卓を囲んだ。矢代はマロニエの太い幹を叩きながら上を仰ぐと、花がぽたぽた落ちて来て冷く鼻を打った。燭台に刺さった蝋燭のような無数の花序の集合した庭の中を光線の縞がはっきりと流れて見える。