Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
木の下闇で道を手探りしなければ分らぬほど暗かった。足もとはなだらかな芝生とは云え、欄干もなくそのまま水中へ没しているので危険なばかりではない。いつどこに男女の影が潜んでいるか、このあたりはそのための配慮ある木の下の闇であってみれば、隠れた人影を乱すのもつまりはこちらが不注意なのであった。
一同もそれを知っていると見えて言葉も云わず久慈についてぞろぞろ歩いた。すると、先頭に立った久慈は不意に途中で立ち停った。
「何んだ。」と矢代は訊ねた。
「道を間違えた。これや、たいへんな所へ来た。」
「しかし、あそこの提灯はたしかに僕らのボートだよ。」
「いや違う。」
こう云いながらも久慈は水際の方へ降りて行こうとすると、
「あツ。」
と云ってまた立ち停った。矢代は久慈の傍へよって行ってあたりを見た。一抱えもある丸い石のような塊が点点として散ったままじっとしていたが、よく見ていると、かすかにどれも少しずつ動くのが感じられた。
「ここ白鳥の巣だわ。」
とアンリエットが上の方から云った。
「何アんだ。そうか。」
と久慈も急に元気な声になった。今まで恐ろしそうにしていた千鶴子も降りて来ると、矢代の肩に掴まりながら白鳥の群れを覗いてみた。