Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
殊に同船で来た客は悪者であろうと何んであろうと兄弟のように見え、内地の批判など役には立たぬ旅愁に誰も襲われていた。いや、むしろ、悪者ほど偉大に見える何ものか間違ったものさえ人は心の中に育て始めていると云って良い。
久慈はそのような心の自分の変化を今も感じたが、自分も沖のように六十を過ぎてこんな所へ来れば、洒洒として臆面なくあんなに振舞うようになるかも知れぬと、他人事とは思えず、傍の真紀子の身体の危さを度を増し感じるのだった。
「不良は伝染るなア。」
久慈は意外な発見をしたように矢代の顔を見た。そして、彼はどのような方法で自分を制御しているものかしらと、瞬間矢代と千鶴子のチロルの夜夜のことを考え、あるいはこの矢代は嘘をついているのかもしれぬと疑いさえ起って来た。
「沖さん、矢代はね、なかなかこ奴不良にならんのですよ。あなた意見をしてやって下さいよ。嘘つきだこ奴。」
久慈はナイフで矢代の胸を指しながら云った。
「あなた、外国へ来て不良にならんのですか。そ奴も少し不衛生だなア。」
沖はナフキンで口を拭きながら珍しげに矢代を見て笑った。矢代はいつもの癖で男女のことを云われると一言も云わず、顔を赧らめたままただ黙っているだけだった。