Classiques japonais avec furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lisez 旅愁 (りょしゅう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 576 941 caractères · 1138 écrans
」
「それ久慈さんのことなんでしょう。」
と千鶴子は先廻りをして笑って訊ねた。
「そうそう、久慈もそれです。それで僕はあの男と絶えず喧嘩だ。久慈の云うような、誰から見たって立派に見える言葉ばかり人に押しつけて云っていちゃ、人は興奮して立派にみな死んでしまう。殺したけれや殺せと、このごろは面倒臭くなったから、あまり喧嘩もしませんが、しかし、そうも云っておられんからな、まだまだ喧嘩だ。」
千鶴子は分ったところだけ頷きつつもまた視線を凱旋門の方形の肩に上げ、
「あれお墓なのね、あたし、ちっとも知らなかったわ。」
と小声で羞しそうに云った。
「あれはここの生活の墓ですよ。無だ。あの無というお墓から、放射状に大通りが八方へ通っているでしょう。僕らはその一つのここにいるんですが、しかし、ここにこうして生きて話してる。ところが、生きていながら朝からコーヒー一杯も飲まされないというのは、これや無茶だ。」
真面目に聞いていた千鶴子も思わず矢代の皮肉に、「くッ。」と笑ったが、意外におお真面目な矢代の表情にまた自然と黙って聞くのだった。
「この通りがお墓の無から出てるから、お茶なしでもないだろうが、しかし、日本の通りはお墓の無と有とが重なった一点から出てるから、どんなになったって、飯が食べられぬということは絶対にない。